メールマガジン
海外最新農業ニュース、
サンホープからのお知らせをお届けします。

“炭素で稼ぐ” 農業の新しいビジネスモデル

世界的に問題になっている、地球温暖化 

CO2メタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスが

原因で、地球の気温が上昇し、海面の上昇や

干ばつによる水不足、また気候変動による

生態系の破壊、農作物への被害などが危惧されています。 

以下の、世界の温室効果ガス排出ガスの

カテゴリー内訳と、農業が占める割合について

示しています。エネルギーや産業由来が多いのは

想像通りですが、驚くことに、農業が10%もの割合を

占めているのです。家畜や稲作由来のメタン、

畑由来の亜酸化窒素が多いでしょうか。 

 

世界全体の温室効果ガス排出における

農業の割合と農業分野のカテゴリー別排出量 

農研機構、

2020年9月8日3回グリーンイノベーション

戦略推進会議資料より 

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/pdf/003_03_01.pdf 

このように農業は温室効果ガス排出源として

捉えられてしまうかもしれませんが

近年は、立派な温室効果ガス吸収源として

注目を集めているのです 

 

その理由は、農地が持つ炭素貯留機能です。 

京都議定書第3条4項でも、農地を排出源ではなく、

吸収源としての活用が記載されています。 

 

農地では、肥料として投入された炭素成分や

窒素成分などを作物が吸収し、残りの一部は

CO2やメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスとして

大気中に排出され、また一部が分解されにくい

土壌有機炭素となり長期間土壌中に貯留されます。 

 

そこで、堆肥や緑肥等の有機物を施用することで、

土壌有機炭素の貯留を促進し、温暖化対策に

効果があるとして、日本の農林水産省もこの対策を

推進しています。 

(令和2年3月25地球環境小委員会 合同会議 第28回

地球温暖化対策計画における2018年度の

農林水産分野の地球温暖化対策・施策の点検結果」より) 

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/attach/pdf/28-2.pdf 

 

仮に全国の農地土壌に堆肥や稲わらなどの

有機物を施用した場合、化学肥料のみを施用した場合に比べ、

年間で貯留できる炭素量が約220万トン増加

するとも言われています。 

農林水産省 2008年3月

「地球温暖化防止に貢献する農地土壌の役割について」 

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/kankyo/04/pdf/data3.pdf 

 

 

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。 

CO2やメタンなどの温室効果ガスを

排出削減した効果を、金銭的価値として取引できる

炭素クレジットについて、ご存じでしょうか。

炭素クレジットが今世界の農業界で注目を集めているのです! 

 

炭素クレジットについてもう少し詳しく言うと・・・

地球温暖化防止のため、先進国は京都議定書に基づいて

CO2の排出量上限を決めていますが、

自国の排出削減努力だけで削減しきれない分について、

企業間や国際間でクレジットとして買い取り

埋め合わせることができるというものです。

炭素クレジットではなく、単にクレジットと

表現される場合もあります。 

 

これを農業で活用するとはつまり、農地土壌が貯留する

炭素量は増やし、増加分を炭素クレジットとして取引し

有機農家の新たな財源を生み出すことができる、ということです。 

農家は作物で評価されるだけでなく

持続的な取り組みも金銭的に評価され、

報われる時代がきているのです。 

 

そこで、農業における炭素クレジットが進んでいる

海外の事例をご紹介します。 

 

イギリスとアメリカに拠点を置く

ソフトウェア企業「CIBO」の例を見てみましょう。 

2020年10月、農家がCO2排出削減量を取引可能な

形態にしたカーボンクレジットを生成し、販売できる

オンラインプラットフォーム「CIBO Impact」を

ローンチしました。 

カーボンオフセットに取り組みたい組織や個人が、

農家から直接カーボンクレジットを購入できる

取引市場を提供し、農家は自分の土地を同サービスに

登録、CIBOはその土地におけるCO2排出量の

削減および炭素隔離の成果を数値化することで、

スムーズな取引ができる、というものです 

https://www.cibotechnologies.com/ 

 

同じように、2020年10月に始まった

アメリカ企業「TruterraNoriによ

プロジェクトでも、農場での保全活動による

炭素除去の影響を、炭素クレジット収益として

確認できるサービスを提供したり 

 ドイツの企業「Bayer」も、ブラジル企業「Embrapa」と協力し、

2020年から2021年にかけて、気候に配慮した

農業慣行実施するブラジルとアメリカの農民約1200

炭素除去した分たけ、相当な報酬を与えると発表したり。 

 カナダの企業「Farmers Edge」と「Radicle」も、

生産者が削減した温室効果ガスをスコア化し

今まで複雑だった炭素クレジットの報告書から

販売、収益化までの流れを容易にするツールを

提供するなど、 海外のアグテック企業の中で、

炭素市場はかなりの盛り上がりを見せています。 

日本でももちろん、炭素クレジットへの

取り組みが行われています。 

最近では、今年20211月に滋賀県が、

「琵琶湖クレジット」と名付けて琵琶湖・淀川水系の

企業に対し、経済活動で発生するCO2と相殺する

「カーボンオフセット」としての購入を

呼びかけるなど、動きがありました。 

 

しかし、農業と絡めた炭素クレジットの

事例はまだほとんど見当たりません。 

 昨年2020年9月にJ-クレジット制度1において、

「バイオ炭※2の農地施用」に関する方法論が

新たに策定され、農地にバイオ炭を施用し、

難分解性の炭素を長期間土壌に固定することによる

排出削減量をクレジットとして認証できるように

なったものの、日本での農業における

炭素クレジット市場形成には、

まだ時間がかかるかもしれません 

https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/201021.html 

※1 温室効果ガスの排出削減量や吸収量を

クレジットとして国が認証する制度 

※2 燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、

350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物 

 

ご興味のある農家さんは、

炭素クレジット制度について

一度調べてみてはいかがでしょうか。 

 

参考記事: 

https://www.futurefarming.com/Smart-farmers/Articles/2021/1/How-digital-tech-helps-farmers-make-money-with-carbon-credits-692415E/?utm_source=tripolis&utm_medium=email&utm_term=&utm_content=&utm_campaign=future_farming 

 

https://www.futurefarming.com/Register-or-login/?returnurl=%2fSmart-farmers%2fArticles%2f2020%2f12%2fSoil-carbon-market-could-grow-quickly-globally-691091E%2f 

 

https://www.futurefarming.com/Register-or-login/?returnurl=%2fTools-data%2fArticles%2f2020%2f10%2fPilot-project-translates-farm-data-to-carbon-credits-656957E%2f 

 

https://www.futurefarming.com/Register-or-login/?returnurl=%2fSmart-farmers%2fArticles%2f2020%2f12%2fPayment-for-carbon-soil-sequestration-688307E%2f 

 

https://www.futurefarming.com/Register-or-login/?returnurl=%2fSmart-farmers%2fArticles%2f2020%2f8%2fBayer-sets-up-carbon-sequestration-market-for-farmers-619701E%2f 

 

https://www.futurefarming.com/Register-or-login/?returnurl=%2fTools-data%2fArticles%2f2020%2f10%2fFarmers-Edge-and-Radicle-offer-hi-tech-carbon-credit-program-649965E%2f 

sunnhope mailmagazine vol.19